電気刺激(tDCS)による認知機能向上 - 米空軍の最新調査
木曜日, 11月 10, 2016
米空軍によって調査された「tDCSによるマルチタスク能力への影響」の研究結果が、2016年11月4日に発表されました[1]。
最新調査
対象はアメリカ空軍兵20名(平均31歳、男性16、女性4)、2重盲目、tDCS(経頭蓋直流刺激)を装着し、左側の背外側前頭前野を刺激することで、マルチタスク能力が向上するのか測定を行いました。グループは二つに分けられ、プラセボ群は、tDCSと似せた偽物を使用しています。
この調査目的は、tDCSによる刺激で「注意力・ワーキングメモリの向上を示すエビデンスはあるけれど、マルチタスクに関しては調査されていない」という理由で開始されています。
左側に装着されるのは、右利きの人は、N-back課題などで左側前頭葉がより活発になるためです。背外側前頭前野にanode(電流を流しこむ電極)、腕にCathode(電流が流れ出す電極)を付けています。
マルチタスク測定
MATBプログラムを30分間行い計測されました。MATBプログラムは、標準・リソース管理・指示通りの操作など、パイロットに必要なマルチタスク課題です。
結果
総合した結果で、明らか向上がみられています(赤線がtDCS)。そして、パイロットのマルチタスク能力を促進・強化する、新しい発見であると結論付けています。
The findings provided new evidence that tDCS has the ability to augment and enhance multitasking capability in a human operator.
メタ解析では?(2016年)
61のtDCS研究のメタ解析では、以下のように結論付けています[2]。
健常者を対象した調査では、tDCSにより反応速度が向上するが、正確性の向上はみられない。しかし、特に女性の場合は、電流刺激を高めれば正確性も上げれる可能性がある。
Healthy participants respond faster, but not more accurate on cognitive tasks after a-tDCS. However, increasing the current density and/or charge might be able to enhance response accuracy, particularly in females.
症例報告
モダフィニルやカフェインと比べ、副作用が少ないとも言われていますが、深刻な症状を引き押している症例報告があります。
ヘルペス脳炎の治療完治後、外来として20分のtDCSを4日間継続したところ、ヘルペス脳炎が再発し、脳スキャンで確認すると、通常ではありえない症状の悪化が確認されています[3]。
ヘルペスは成人の7割りが感染していて、症例報告が一つだけなので、BBBを通過しやすくするということではないと思います。しかし、既に脳にウイルスが侵入している場合、症状が”急速に悪化”する可能性があるようです。
tDCSで、米空軍兵のマルチタスク能力が向上するようです。国の機関なのでエビデンスとしては強いでしょう。
海外ではtDCSのコミュニティーがあったり、Youtubeのレビューも多く、やっている人は意外に多いようです。いつか試してみたいとは思ってます(笑)
- The Effects of Transcranial Direct Current Stimulation (tDCS) on Multitasking Throughput Capacity
- A Systematic Review and Meta-Analysis of the Effects of Transcranial Direct Current Stimulation (tDCS) Over the Dorsolateral Prefrontal Cortex in Healthy and Neuropsychiatric Samples: Influence of Stimulation Parameters.
- Relationship of herpes simplex encephalitis and transcranial directcurrent stimulation–a case report
